赤灯で動かなくなったCASIOの壁掛け時計の修理

電池交換をしても赤色灯がつきっぱなしで針が動かなくなった、CASIOの電波壁掛け時計(IQ-1120NJ)を分解修理しました。

今回は虫が原因でしたが、針を動かすギアのグリスが堅くなって動きにくくなっている場合もあり得るので、同じ症状で赤色灯がつきっぱなしで困っている方の役に立つかもしれません。

電池交換

電池交換の時期ではなかったのですが、数日前から時計の秒針の動きが怪しくなり停止したので、電池交換が必要なのかなと交換することにしました。

いつもは電池を交換した途端に、秒針が勢いよく動き始めます。ところが、新しい電池に交換したにもかかわらず、今回は全く動きませんでした。

正常の状態であればリセットボタンを押すだけで後は自動的に電波の受信が始まり電池交換が完了します。

しかし電池交換直後にも関わらず、文字盤の赤色LEDすら点灯しませんでした。

時計の故障に気づく

CASIOの取扱説明書フォームIQ-Lシリーズ取扱説明書を確認したところ、正常時の動作は以下のようになっていました。

  1. プラスマイナスを間違えないように電池を入れます。
  2. 電池を入れると同時に時・分・秒が「12:00:00」の位置に向けて自動的に動き始めます。
  3. 裏面のリセットボタンを押します。
  4. 表面の受信ランプが点滅します。緑は正常で赤は受信しにくい事を表します。

電池を疑う

うんともすんとも言わなかったので、一番初めに電池を疑いました。今回は充電直後の水素電池を使いました。水素電池は通常1.2Vで、乾電池の1.5Vより低いため、これが原因で動かないのかもしれないと考えたのです。

テスターで計ってみたら、充電直後ということもあり1.4Vでした。

次に時計の内部ショートなどによる電圧降下を疑い、電池ボックス端子での電圧を測りましたが正常値の2.9Vと出ていました。

この時点でも赤LEDが点灯していなかったので、普通に壊れたと思いました。

電池の豆知識

乾電池と水素充電池の違いは、乾電池が1.5V から徐々に0.9V以下に緩やかに降下するのに対し、水素電池は充電直後の1.4Vあたりから短時間で1.2Vにカクンと落ちてから1.2Vを保ち放電完了直後にガクッと1.0以下に電圧が下がる特性を持っています。

アルカリ電池やマンガン電池は0.9V以下から使用限界になります。水素電池は1.0V以下で使用限界に達します。電池は完全に放電する前に交換する方が安全です。

電圧値が使用限界を下回った状態で使用し続けたり、自然放電が進むと電池内部が劣化してしまいます。使用限界を超えた電池のことを過放電状態と呼ぶこともあります。

過放電状態の水素電池は、蓄電容量の低下などの劣化が急速に進みます。また、アルカリ電池は他の電池よりも、電池ボックスを汚す厄介な液漏れが発生しやすいので注意が必要です。

赤色ランプ点灯

電池を入れてから2分程度ほかっておいたところ、赤ランプが点灯しました。点滅ではなく点灯です。

赤色ランプが点灯している状態
これは後から撮った写真ですが、故障時は針の位置は止まったところでした

もう一度ネット検索で、「CASIO 赤ランプ 動かない」で検索をかけてみたところ、初期不良で交換してもらったというレビューが数件ありました。

もう10年になるため保証も期待できず、気に入っていただけに、新しい時計を選ぶのも気がひけたので、しばらくボタンをポチポチ押したり、振ってみたり、電池を入れ直したりしていました。

分解修理を試みる

振ったりいろいろ試しているうちに、リセットボタンを押すと、ちょこっとだけ秒針が動くことに気づきました。

もしかして内部の配線がキレたのかと、ダメ元で分解して中を確かめることにしました。

裏ぶたのネジを外す

裏ぶたのネジは外周が9本で皿面に2本あります。今回やってわかったことは、外すのは外周のネジだけです。

皿面の2本のネジは時計のギヤボックスを固定しているようです。分解するとわかりますが外さない方が安全です。

時計の裏面

プラスドライーバーは1番を使いました。いきなり番号指定で書きましたが、ほとんどの場合はどのネジが合っているかわからないので、とりあえずドライバーの先端が鈍っていないか確認して、上から軽く押してネジ山がぴったり合い回している感覚が手に伝わります。

ネジのサイズ
一本だけ外したネジ

経験上、少しでも空回りする場合はネジ山を潰す恐れがあるので無理に回さない方が良いです。ネジ山が潰れると当然外せなくなります。

外周のネジは1本だけ外し、後はセロテープでフタをしました。こうすることで、ネジの紛失防止とネジあわせが楽になります。この恩恵に付いてはふたを戻すところで説明します。

壁時計のネジを外した状態

ネジが飛び出ているので手をけがしないように注意が必用ですが、セロテープでフタをしているので裏返してもネジが外れません。

原因はバグでした

フタを外してよく見ると、長針に小さなクモが亡くなり引っかかっていました。世界で初めてのコンピューターのエラーは小さな虫(バグ)と聞いたことがあります。電波時計のエラー原因も虫というのを見て、虫って侮れないなと感じました。

長針に引っかかっていたバグ(くも)

クモの亡骸を取り除いて、電池を入れましたがまだ動きませんでした。

半分やけになり秒針をグルグルと軽く手で回してみたら、秒針がちょこっと動き始めました。とってもうれしかったです。

あとは、長針と短針も一緒に軽くグルグル回してみたら、秒針が力強く動き始めたのです。ギヤボックスの中で何かが引っかかっていたのかもしれません。

リセットボタンを押すと勢いよく秒針が一周して、長針が回り始めました。秒針が12時のところでピタッと止まり、安心しました。

赤点灯で返品される理由の考察

CASIOの壁掛け時計の商品レビューなどで、届いたけど電池を入れても動かず赤色LEDが点灯しっぱなしだったという書き込みを何件か目にしました。

もしかして、返品された多くの時計は、倉庫でギヤボックスのグリスが固まり動かなくなっていただけかもしれません。高価なスイス時計でなくとも時計であることには変わりはなく、たった一つの虫の引っかかりで動かなくなるほど繊細な機構になっています。

電波時計は指で針を直接回すことができない構造になっているため、グリスなどの固形化は仕方ないのかなぁと思いました。

ギアボックスは覗かない方が賢明

最初に裏ぶたの皿面にある2つのネジを外さない方が良いと書いた理由を説明します。

ギアボックスを確認するためには表面の針を外す必要があります。機構上の0秒基準位置がずれるなど、電波時計としての機能が壊れる可能性があり、やはりそこまでする必要があるときは、修理に出すか、諦めるかした方が良いとおもいます。

なんだかんだあって、手術をすると気には最小限のメス入れにとどめる的なお医者さん思想が、修理でも有効だと改めて感じました。

裏ぶたを取り付ける

とりあえず、動き始めたので、時計面とガラス面を綺麗に拭いてから、元通り戻すことにしました。

時計の表蓋。ガラス面

ここまで引っ張って裏ぶたを外すときに1本だけ残して、ネジを全部抜かない方が良いと書いた理由を説明します。

裏ぶたのネジを止めるときのポイント

このように、おおよその位置に木枠にはめ込めて、外したネジ穴を見ながらスライドさせると、すぽっとはまります。

詳しく書くと、ネジ穴から木目で白く見える状態でスライドさせていくと、穴位置に重なったとき穴の陰で黒く見えます。あとは、ネジを入れて一本目を締めるだけです。最後に、残りのセロテープを一カ所ずつ外しながらネジを締めていきます。

ネジを全部抜いてしまうより、圧倒的に楽に締めることができます。この方法は、様々な製品を分解するときにも使えるテクニックなので、覚えておくと色々役立つかなと思います。

大したことがないような小さな工夫ですが、ちょっとした円形物を分解するときのノウハウだと思います。

このノウハウは数多くの、紛失したネジや、止める位置がわからず余ったネジ事件の被害に遭った、尊い製品たちの犠牲の上に確立したスキルなのです。(話盛ってしまいました)

電波時計の再受信で自動的に合わせる

時計の修理が完了したので、電池を入れ直して再度、リセットボタンを押すと、素早くカチカチカチと秒針が回り長針が回り始め短針が動き4分ぐらいかけて「12:00:00.5」の位置で停止します。

壁時計の正常な受信待機状態

ここからが長くて、ランプが緑に点滅してしばらくすると赤の点滅にかわり、緑に点滅する状態が続き、急に長針が回り始めて現在の時間を表示し始めます。ここまで25分程度待ちました。

記事用に1回目はストップウォッチで計り2回目はGoProで撮影しました。いつもどれぐらい時間がわからなかったので、ほんと暇だなぁと思いながら試してみました。映像は撮れましたが、結局動画作成はやめました。

リセット後の受信完了後にしばらく、0秒付近で緑点滅を何回か繰り返しますが、しばらくすると、通常状態の数時間ごとに1分の調節に戻ります。

日本標準時(JST)を発信する電波が停波している事もあります

いつまでたっても緑点灯にならない場合、電波時計の日本標準時を送信している電波が停波していることもあります。

国内に2カ所ある送信所の電波送信状況は、国立研究開発法人 情報通信研究機構(NICT)の標準電波(電波時計)の運用状況から確認することが出来ます。

注意点が1つあり、雷害などによる突発的な停波情報は、再開後の「ご報告」として表示されるため、案内がなくても運用が停止しているケースがあります。事前告知されている定期点検や雷害などで送信所の設備が故障していなければ、おおよそ1時間ぐらいで送信が再開するケースが多いです。

まとめ

最初に電池を交換しても動かない状態になったときは、結構ショックを受けましたが、なんとか修理できて良かったです。

しばらく使っていなくて、内部のグリスが固まってしまったり、虫が入り込んでしまったり、色々な原因で動かなくなることもあるかと思います。

故障原因はいろいろあるかと思いますが、赤点滅ではなく赤点灯で針が動かなくなったときには、フタを外して回してみると復活するかもしれません。何かの参考になればと祈っています。

最後に、ずれた時計でときどきミスをする僕にとって、赤点灯で時間が正確でないことをアピールするCASIOの時計って、よくできているなと思いました。

2年半以上経ちましたが、今回修理できた電波時計は、今日も元気に動いています。本当に修理できて良かったです。

壁掛け時計IQ-1150NJの紹介

この時計けっこう気にいっているので、使っている壁掛け時計のAmazonリンクを張りました。CASIOの壁掛け時計は基本的に外装が変わるだけで同じ、電波時計ユニットを使っている感じがします。

SEIKOとCASIO以外の1,000円や1,500円で売られているノーブランド電波時計は、電波を受信しなかったりすることがありますが、この時計は10年使っていても電池切れの時以外狂うことはありませんでした。

アマゾンリンク

IQ-1150NJ-7JF
IQ-1150NJ-7JF

CASIOの壁掛け時計です。今回修理した15年以上前のIQ-1120NJは廃盤になっているため、起点の一つとして見た目とサイズが同じ現行品のIQ-1150NJ-7JFのリンクです。Amazonの自動提案によってデザインが違うCASIOの色々な時計も選ぶことができます。
色々種類がある中で、若干秒針の音がコチコチ大きいかもしれませんが、こちらは夜間10時から6時と12時から8時まで夜間ほんのり橙に光る設定にすると秒針を止めることができるタイプです。
CASIOの電波時計も値段がしっかり上がっており、次は四角い時計がいいかもと思いつつ、最近朝カタカタカタッと秒針が55秒から5秒の間で早足してからシレッと動き続けるところを見てしまいました。その姿が愛おしく、ますます今の時計への愛着が増してしまいました。あれから1年以上経った2024年1月になっても現役で頑張っています。
すでに15年以上経過しているため販売は終わっていますが、今回修理した時計の販売ページはIQ-1120NJにあります。