RTX3090のコンデンサー

購入検討中だった前回の記事から、ついに到着したMSIのGeForce RTX 3090 GAMING X TRIO 24G。早速レビュー記事を追記しようとして、時間がかかりそうなので、書きやすい消費電力の実測値と感動したコンデンサーについて書いてみようかなと思いました。

ホビー三昧では熟考して買った商品ほど、開封が遅れる事が多いのですが、今回は到着翌日にPCに組み込みました。

RTX3090の裏面コンデンサー写真

パソコンに組み込んでしまうと、組み込まれた部品を見る事が難しくなるので、毎回写真を撮っておくのですが、今回はホビー三昧で紹介することも考えてすごいたくさん撮りました。

GPU裏面のコンデンサー。裏板の隙間から周辺もびっしり詰まっているのが見える

もう、見てください。このびっしりと張り付いているチップコンデンサー。裏板の隙間から周辺にもコンデンサーがびっしりついているのが見て取れます。

RTX2080Tiは、GPUが裏板に隠れていて見えませんでしたが、GTX1080Tiと同様に今回はGPU真裏が露出しています。

RTX3090の側面のコンデンサー

側面から見えるコンデンサーも少しいつもと違います。2080は箱形チップコンデンサーでしたが、今回は固体コンデンサーに変わっています。買う前からわかっていた事だけど、となりのPCI Express電源コネクタが8ピンで3つもついている。

ここからは、箱に取り付け放熱を確保してと色々な作業がありますがそこのところは別記事に書きます。

実測電力消費量

早速取り付けて、ワットチェッカーでPCのコンセントに流れた消費電力を測ってみました。

はじめに、構成がわからなければ意味のない数値なので電力が関わる部分だけ説明します。CPUはIntelのi9-10900Kで、CPUはGeForce RTX 3090、電源は80PLUS認証がPlatinumの1200Wです。NVMe SSDが1枚に2台のSSD、HDDが1台です。31.5インチの4Kモニターが点灯時に35W程度消費しています。

CPUについてはBIOSでTDP125Wリミッターをかけています。ほぼ電力ブーストがかからない状態です。

レンダリングについては、Irayレンダリングエンジンでテストをしました。詳しいことはわかりませんが、RTコアとTensorコアを利用している可能性があります。もしかしたら最新版のIrayレンダリングの場合はもう少し消費電力が上がる可能性があります。

消費電力実測値

Excelやネット閲覧など、負荷がかかっていない状態ではモニタ込みで100W(PC単体65W)ぐらいなので、ローエンドのパソコンと大して変わらない電力消費量です。おかげで、普段使いのPCとしても、使えて便利です。

CGレンダリング時

さて、実際に動かしてみましょう。レンダリングを回してみたら予想通り600Wを超えました。モニター込みの電力なので、パソコンケース内の発熱量は35W程度を引いてください。電源は50%負荷で92%の効率なのでコンセントでの実測値からモニターの35WとPC電源の変換損失(8%)を引いた値を書いています。

右下のワットチェッカー写真はモニターを含めたPC全体のコンセントに流れた瞬間消費電力値です。

CPUレンダリングなしでCUDA使用率100%のレンダリング中キャプチャ
Cudaが100% (549Wはモニタを含めた消費電力)

GPU単体だとCUDA使用率が100%に張り付いて474Wあたりで安定して動いていました。

CPUとCUDAによるレンダリング中キャプチャ
CPU100%に、Cudaもほぼ100% (663Wはモニタを含んだ消費電力)

CPUのハイブリッド演算で10コア(20)全部が4.7GHzで動いて577Wになっています。ただ、CUDAが100%で張り付かずときどき90%ぐらいまで落ち込むため、CPUの処理待ちが発生していた可能性があります。

Blackmagic RAW Speed Test

Blackmagic Davinci Resolve17に付属する、Blackmagic RAW Speed Testでの消費電力を、新型のワットチェッカー(RS-BTWATTCH2)で測定しました。

SpeedTestの右列から列に向かって負荷が高くなる方向で計測されていきます。最後は8Kの12:1でCPUとCUDAの交互に切り替わりながら負荷がかかり続けます。

Blackmagic RAW Speed Test結果キャプチャ

テスト中の消費電力をリアルタイム計測したデータをExcelで整形しました。青がコンセントでの実測値で、オレンジがPC内で消費されている電力の計算値です。

エコワットによる測定値グラフ(オレンジはPC内計算値)

消費電力と言うより、ノーマル状態のRTX3090の性能指標になります。8Kのリアルタイムレンダリングは厳しそうですが、4kだったらサクサク編集できています。もはやRTX2080Tiには戻りたくありません。

Ecexlなどを使っているときは、60W程度なので以外と少ない消費電力です。といっても、GPUカードを増設していないHPのi5-9600のPCは17Wで動いているので、省エネですとは言い切れません。

CPUの電力リミッター外す

今までの実測値は、空冷式CPUクーラーの性能とケースを閉じた状態では冷やしきれないため、CPUの最大値を125W(TDP)に制限しています。

ふたを開けて扇風機で強制冷却をかければi9-10900Kは、200W(TDP)まではマザーボードの簡単オーバークロックで普通に伸びるCPUです。液冷などで放熱に問題がないPCなら結構行けそうです。

今回のリミット状態から75Wが加算されてモニターや電源変換ロス分を含まない、PC内部の消費電力は652Wとなります。

消費電力全体で見ると、モニターと合わせて744Wの消費電力になると思います。

ここまでが、マザーボードなどの自動オーバークロックで簡単にいける範囲でこれ以上のCPUのオーバークロックをすると、モニタを含めたPC全体で800W越えもあり得る数字になってきます。

手綱を離すとRTX3090も化け物じみた消費電力ですがi9-10900kも負けずと怪物なみの大食いです。

ゲーム中の消費電力を下げる設定

RTX3090のドライバーをインストールした直後の初期状態ではモニターの表示性能にかかわらず全力で演算する設定になっています。

オーバークロック用の「MSI Afterburner」など特別なソフトを使わなくても、NVIDIAコントロールパネルから節電設定ができます。

NVIDIAコントロールの最大フレームレート設定画面

ほとんどのディスプレイは60Hzなので、垂直同期をオンにした上で、最大フレームレートを60FPSに設定することで、RTX3090を省エネで動かすことができます。

あわせてプレイするゲームのオプション設定を「垂直同期(Vertical Sync)」オンに設定することで、無駄な演算を減らし消費電力を抑えることができます。

参考までに「The Sims4」では初期状態で450W近かった消費電力が、250Wまで下がりました。当然4kモニタによる最高画質設定でです。

これを知らなかったため「The Sims4」のまったりプレイで450W近い電気を使い続け、あまりにもったいないのでカスタム設定で画質を下げたのですが350Wまで下がらなかったのです。あと、CPUやGPUの演算が増えると消費電力も増えますが、画面がカクツク事はありません。

「Cities: Skylines」も消費電力が下がりましたが、こちらは街のサイズが大きくなるとCPU演算の方が電気に影響を与えているようです。

ほとんどのモニターは60Hz(60FPS)

現在市販されているゲーマー向けディスプレイモニターの最高峰であっても最高リフレッシュレートは240Hzでしたが、最近驚きの360HzのディスプレイROG SWIFT PG259QNがAmazonでも普通に購入できるようになりました。

リフレッシュレートとは一秒間にモニターの描画を書き換える回数で、垂直同期やフレームレートとも言われます。360Hzであれば360FPSと読み替えることができます。

60Hzは1周期0.0166秒(16.6ms)です。垂直同期が60Hzのモニターであれば、律儀に16.6msごとに描画を書き換えています。

ざっくりと、省エネはレイテンシーを犠牲にして垂直同期をONにして、少しでもレイテンシーを短い状態である現在を表示したい場合は垂直同期を高速オフ(別名FAST SYNC)に設定します。

GPUとモニタの垂直同期の関係

垂直同期についてはわかりにくいので少し説明します。たとえて言うと、GPUによって演算された描画データは、GPUの描画結果が入るGPUプラットフォームと、モニーター側のプラットフォームに、HDMIケーブルという線路を走るモニターの縦行分編成の列車で繋がっていると表現します。

GPUの描画データはGPUバッファAに乗るためのプラットフォームに演算結果となる席が指定されたピクセルを座席番号順番に、プラットフォームに並べて行きます。

GPUの垂直同期設定がONの場合は、すべてのピクセル(画素)の準備が完了てから列車に間に合うようにプラットフォームに並べますが、OFFの場合は最上行から最下行まで順番に準備ができ次第プラットフォームに並べて行きます。

列車はモニターの垂直同期の周期で定期運行されており、60Hzの場合周期は0.0166秒(16.6ms)ごとに列車が到着しプラットフォームに乗っているピクセルをのせていきます。

そのため垂直同期がOFFの場合、並べている最中の状態が表示されてしまいます。テアリングと呼ばれています。

垂直同期がONの場合には、完全な状態でプラットフォームにデータが並んでいるためテアリングは起こりませんが、例えばGPUの描画に0.017秒かかると、前回から次の列車が到着するまでの0.0332秒間同じ画像になります。

これを防ぐのがG-SYNCと呼ばれる機能です。これはプラットフォーム間で連絡を取り合いながら接続を行います。GPUのデータが0.017秒かかった場合、定期便の発車時刻を0.004秒遅らせてそのタイミングを始発として再スタートします。

モニター側のプラットフォームもモニターへの送り出しを0.004秒間待つため、モニターでは0.004秒間通常より長く表示されるだけで遅延は少なくなります。G-SYNCがない場合より0.0162秒早く表示がされるため、垂直同期の範囲内でGPUの最高速度で描画が切り替わっていきます。

このようにG-SYNCはモニターとGPU側の連絡機能が必要になります。一方でモニターの描画速度以上に早く表示することはできません。

GPUの描画速度が定期便より速い場合は「FAST SYNC」というGPU側のプラットフォームへの待機所グループを2つ用意して、上書きする形でGPU描画を続け、常に描きかけのテアリングでない一つ前の待機所グループを列車に乗せることで、なるべく描画直前の状態を表示するための機能があります。

より詳しい垂直同期に関する外部記事リンク

PC Watchの「NVIDIAのさまざまなディスプレイ垂直同期方式をもう一度整理する」がわかりやすいです。

ハードウェアに関する技術情報として専門的すぎますが、垂直同期のタイミングを調べるに当たって、一番詳しくて実用的なソースを見つけました。Intelの「アルテラのHigh-Definition Multimedia Interface (HDMI) IPコアのユーザー・ガイド」にHDMIのプロトコルレベルで説明があります。

体感速度

ゲームでのベンチマークは検索すると色々なところで出てくるため、ここででは取り上げず、実際的にCGのレンダリング速度を計ってみました。

RTX3090の箱とRTX2080Tiの箱。少しサイズが大きくなりました。
箱が若干大きくなりました。

VRAMを7.7GB程度消費するCGを、GPUだけでレンダリングしたところ、RTX2080Tiでは25分かかっていた物が、RTX3090では9分弱で終わりました。

比較的軽いCGでは4分ぐらいかかっていた物が1分20秒で終わり、体感的には気にせずバンバン、レンダリングで確認ができます。

レンダリングなどを行わない移動や変更などでは、消費電力もPC全体で一瞬上がって200Wになりますが、ほぼ100W程度なので、まったくモンスター級の牙など見せない普通のパソコンです。

数少ないゲームを起動しても、レンダリングの時のようなフルスロットルもなく、おおよそ240W~300Wぐらいで推移しています。ときどき瞬間的に400Wを超えたり500Wになったりします。

消費電力の動きがそのままギアチェンジのタイミングだとすると、まったく突っかかりもなく、スムーズでしかも、チアチェンジも頻繁に動いているので、無駄のないグラフィックカードだと思います。

RTX2080Tiの時でもモニタを含めて400WぐらいまでがMAXだったので、明らかに消費電力が増えています。

電気使用量が増えても、ゲームをやっているときには違いはわかりませんでした。。。

もう一段上のグレードでも良かったかも

時間的にも体感的にも、RTX2080Tiに比べてかなり早くなりました。

ケースの熱容量と消費電力に問題がない場合は、MSI GeForce RTX 3090 SUPRIM X 24Gの方が、色々な意味で満足できると思います。

組み付けてわかったのですが、旧世代のAntec P180という古いタイプのケースでもまだまだ熱容量に余裕がありました。

ただし、ワットチェッカーの積算電力計の数値を見る限り消費電力が2倍になっています。たぶん、レンダリングの結果がすぐに出るので以前ならレンダリングの回数を減らそうと、慎重になっていたところが、気にせずに回すため、平均してPC使用中のフル回転の期間が延びただけかもしれません。

ケース組み付け記事については、次の記事に追記しようと準備中です。熱量計算からかなりマニアックな記事になりそうです。ここまで計算してやると、CPUクーラーの放熱量は変わりませんが、安心して全開でGPUを動かすことができます。

今回はココまで。GPU裏側のチップコンデンサーがあまりにびっしりついていたので、ついつい先行して記事を書いてしまいました。

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